テクノロジー

カットオフ波長とその測定方法とは

■カットオフ波長とは

 光ファイバのカットオフ波長(Cut-off wavelength)は、あるモードが光ファイバを伝送していけるか遮断されるかの境界となる波長のことです。シングルモード光ファイバでは、伝送波長がカットオフ波長より短くなると基本モードに加え高次モードも伝送できるようになります。このため、カットオフ波長はシングルモード光ファイバの特性を表す重要な指標として使用されます。(図1.参照)

遮断波長の概念図(ステップインデックス型光ファイバ)

図1. 遮断波長の概念図(ステップインデックス型光ファイバ)

■カットオフ波長の定義

 シングルモード光ファイバの理論的なカットオフ波長λctは、ファイバ断面の屈折率分布形状から算出でき、主に使われているステップインデックス型シングルモード光ファイバの場合、

\[\lambda_{ct} = \frac{2\pi{a}\sqrt{{n_{core}}^2 – {n_{clad}}^2}}{2.405}\]

から計算できます。ここで、aはコア半径、ncoreはコアの屈折率、ncladはクラッドの屈折率です。
また、

\[\sqrt{{n_{core}}^2 – {n_{clad}}^2}\]

NAなので、NAから理論的なカットオフ波長λctを求めることができます。

 他方、マルチモードからシングルモードへの変化は理論的に求められる波長で急峻に起こるのではなく、ある波長域の中で緩やかに起こります。このため、国際電気通信連合(ITU)では理論的ではなく実際の測定から求める実効カットオフ波長を『光ファイバに入射する高次モードを含む全光電力と基本モードの光電力との比が0.1dB(シングルモード伝搬域での透過光電力に対する高次モードを含む全透過光電力が0.1dB=1.02329倍)となる点の波長』と定義して国際規格としています(図2.参照)。

実効カットオフ波長の決定の模式図(曲げ法による測定)

図2. 実効カットオフ波長の決定の模式図(曲げ法による測定)

■カットオフ波長の測定

 カットオフ波長の測定値は、測定に使用する光ファイバの長さや曲げの大きさなどによって変わってしまうので、

Ⅰ)ケーブルカットオフ波長(Cable cut-off wavelength)λcc:ファイバ長22mのファイバ素線またはファイバケーブルを使って測定します

Ⅱ)ファイバカットオフ波長(Fiber cut-off wavelength)λc:ファイバ長2mのファイバ素線を使って測定します

Ⅲ)ジャンパーケーブルカットオフ波長(Jumper cable cut-off wavelength)λcj:ファイバ長2mのジャンパーケーブル(局内設備などで使われます)を使って測定します

の3種類で規定しています。一般的には、実用上最も安全サイドなλccの使用が推奨されています。

※ファイバ素線は、脆弱な光ファイバのガラス表面を紫外線硬化型樹脂などで保護(1次被覆またはプライマリーコートと呼ばれます)したもので、外径は25mmと規定されています。また、ファイバ心線は、ファイバ素線をさらにノンハロゲン樹脂などで覆い(2次被覆またはセカンダリーコートと呼ばれます)補強したもので、外径は0.9mmに規定されています。

 カットオフ波長の測定は、被測定用シングルモード光ファイバに曲げを加えた場合と曲げを加えない場合とで伝搬モードの損失特性に差が出ることを利用した『曲げ法』(図3.参照)と、2m程度のマルチモードファイバを励振用ファイバとして用いることにより、マルチモードファイバからの出射光(被測定用シングルモードファイバへの入射光電力)と、マルチモードファイバと接続した被測定用シングルモードファイバからの出射光電力との比には伝搬モードの有無に基づいた差が出ることを利用した『マルチモード励振法』(図4.参照)のどちらかあるいは両方で行うこととされています。

 

カットオフ波長の測定(曲げ法)

図3. カットオフ波長の測定(曲げ法)

カットオフ波長の測定(マルチモード励振法)

図4. カットオフ波長の測定(マルチモード励振法)

 

 

 

 

 

 

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