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波長分散と分散補償ファイバのしくみとは

波長分散・材料分散・構造分散とは

光ファイバを伝搬する光波の速さは波長によって異なります。この現象を波長分散といい、波長多重信号などの高速・大容量光通信において光信号波形を歪ませ、伝送容量(伝送スピードともいいます)を制限する一因となります。分散補償器とは、この波長分散による光信号波形の歪みを修正する(補償する)機器や装置です。

波長分散は、光ファイバに使うガラス材料の屈折率の波長依存性に起因する材料分散と、コア・クラッドの分布形状(構造)に起因する構造分散(導波路分散ともいいます)※1からなります。低損失となるファイバ材料は限られていますので、材料分散はほとんど変えられませんが、コア・クラッドの分布形状は比較的自由に変えられるので構造分散を変えることができます。このため、コア・クラッド形状を工夫して、波長分散がゼロとなる波長を変えたり、波長に対する分散の大きさを変えたりすることができます。(図.1~図.3 参照)

図1. 石英ガラスの屈折率の波長依存性

図2. シングルモードファイバの波長分散・材料分散・構造分散(1.3μmで波長分散がゼロ)

図3. 代表的な光ファイバのコア・クラッド構造と分散

[用語解説]

※1 構造分散 : 構造分散(導波路分散)は、光波のファイバ断面内での光分布形状が変わると波長に対する光波の伝搬速度も変わることよって生じます。コア・クラッドの屈折率差を大きくする、コアの分布形状に丸みをもたせる、コア径を小さくするなど、コア内に光を強く閉じ込めるような形状にすると構造分散値を大きくすることができます。

■分散補償ファイバなど分散補償器のしくみ

分散補償器は、波長分散による信号波形の歪みを補償するもので、主に二つの方式が使われます。一つは波長分散と逆の特性を持つ分散補償ファイバ(DCF:Dispersion Compensating Fiber)を縦続して波長分散の影響を打ち消す(歪みを補償する)方式です。もう一つは、光ファイバ内でブラッグ反射を起こさせる光ファイバ・ブラッグ・グレーティング(FBG:Fiber Bragg Grating)※2を応用して、波長ごとにブラッグ反射による伝搬時間差を起こさせ、歪みを補償するチャープ・ファイバ・ブラッグ・グレーティング(CFBG:Chirped Fiber Bragg Grating)方式です。

DCF方式は、広い波長範囲にわたっての補償が可能で、波長多重通信など多くの光波で運ばれた光信号を一括して補償することができますが、比較的長いファイバ長(伝送用ファイバ長の1割前後)が必要となり、それに伴い挿入損失も大きくなります。(図.4 参照)

図4. 分散補償ファイバ(DCF)方式

 CFBG方式は、FBGの周期をファイバの長手方向で連続的に変化させたもので、補償に必要なファイバ長も短く(10cm程度)挿入損失を小さくできますが、ブラッグ条件※3を満たす波長付近の光だけが反射されるので補償できる波長範囲が狭くなります。光ファイバからの出力を光サーキュレータを介してCFBGに入射させ、CFBGから反射してきた光を光サーキュレータ経由で検出器に導くようにして補償します。(図.5 参照)

図5. チャープ・ファイバ・ブラッグ・グレーティング(CFBG)方式

[用語解説]

※2 FBG : 位相マスクと呼ばれる回折格子を通して光ファイバに紫外線を照射すると、ファイバの長手方向に周期的な屈折率変化を起こさせることができます。

※3 ブラッグ条件 : ブラッグ反射を起こす波長λBは、屈折率変化の周期をΛ、屈折率をnとして

\[{\lambda_B}=2n\Lambda\]

となります。

■波長分散と分散スロープ

波長分散が通常のシングルモードファイバのように波長に対して急峻ではなく、緩やかに変化するようなファイバを作れば分散補償をする必要がなくなる、あるいは補償範囲を狭くすることができます。このため、分散が強いか弱いかの指標として波長分散の波長に対する傾きを表す分散スロープが使われます。波長多重通信用として、分散補償が不要な超低分散スロープファイバも作られています。(図6 参照)

波長分散の大きさは、1nmの間隔の光波が1km伝送したときに、何psずれるかという指標(ps/nm/km)で表します。通常使われているシングルモードファイバでは、1.3μmでは0ですが、1.55μmでは20ps/nm/km程度となります。分散スロープは、波長分散を波長で微分して求められ、単位はps/nm2/kmで表されます。

図6. 分散スロープと分散許容波長範囲

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