CsIシンチレータ結晶は、質量密度が大きく原子番号も大きいのでγ線の阻止能が高い物質です。添加する材料により無添加CsI、CsI(Tl)、 CsI(Na)の3種類に分類されます。CsIには熱および化学耐性があり、NaI(Tl)と比べると柔らかく丈夫で裂けません。へき開面を持たず、かなり険しい表面をしているからです。そのため急なトラブルに強く、検層、宇宙研究、その他アプリケーションに使うことができます。
無添加CsIは、最大発光波長が他の添加されたCsIと比べると短波長の315nmです。315nmの減衰時間は16nsと短いので、高速度評価などに使用することができます。
CsI(Tl)は、かなり明るいシンチレータ結晶の一つです。最大発光波長が550nmなのでフォトダイオードの読み出しに適しています。また、CsI(Tl)は、僅かに吸湿性があり機械的に丈夫な特性を持っており、放射線耐性が比較的良好なので、高エネルギー物理学によく適しています。
CsI(Na)は、最大発光波長が420nmであり、この波長はバイアルカリ光電子増倍管の光電陰極感度によく一致しているため、NaI(Tl)の85%の光出力が得られます。また、へき開面を持たないため、NaI(Tl)と比べると柔らかく丈夫で裂けません。

■ 主な特性

  CsI CsI(Tl) CsI(Na)
質量密度 4.51 g/cm3 4.51 g/cm3 4.51 g/cm3
融点 721 ℃ 721 ℃ 721 ℃
熱膨張係数 54×10-6/C 54×10-6/C 54×10-6/C
へき開
モース硬度 2 2 2
潮解性 僅か 僅か あり
最大発光波長 315 nm 550 nm 420 nm
カットオフ波長 260 nm 320 nm 300 nm
屈折率 1.95 (at 315nm) 1.79 (at 550nm) 1.84 (at 420nm)
減衰時間 16 ns 1000 ns 630 ns
光集量 2 photon/KeVγ 54 photon/KeVγ 41 photon/KeVγ
相対発光量 NaI(Tl)の4~6% NaI(Tl)の45% NaI(Tl)の85%