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ラージモードエリア(LMA)ファイバーとは

■ラージモードエリア(LMA)ファイバーとは

 ラージモードエリア(LMA:Large Mode Area)ファイバーとは、モードエリア※1が大きい光ファイバーです。モードエリアは、実効断面積(Aeff : Effective Area)ともいわれ、光ファイバを伝搬する基本モードの光電力をファイバ断面内に均等化したときの面積をいいます。モードエリアは、光ファイバの非線形性の影響を算出する際の指標として使われます。LMAファイバは、主にファイバレーザなど非線形性の影響を受けずに大きな光電力を必要とする用途で使用され、コアに希土類元素が添加されているものは発光媒体として、コアに希土類元素を含まないものは伝送用として利用されています。

[用語解説]

※1 モードエリア(Aeff):通常使われるステップインデックス型のシングルモードファイバのAeffは、モードフィールド径(MFD:Mode Field Diameter)※2 2wを用いて次式で求められます。

\[A_{eff} = \pi w^2\]

※2 モードフィールド径(MFD) : 通常使われるステップインデックス型のシングルモードファイバでは、光電力はコアの中心をピークとした正規分布(ガウス分布)形で伝わります。光電力のコア内への集中度を表す指数として、ピークの1/e2となる(光電力の86.5%が集まる)ところの直径をモードフィールド径(MFD)といいます。ステップインデックス型ファイバのモードフィールド径2wは、コア径を2aとすると近似的に

\[2w\simeq2a(0.65+\frac{1.619}{V^{3/2}}+\frac{2.879}{V^6})\]

で表されます。ここでVは規格化周波数(またはVパラメータ)で、次式で定義されます。

\[V = \frac{2\pi{a}\sqrt{{n_{core}}^2 – {n_{clad}}^2}}{\lambda}\]

■ラージモードエリア(LMA)ファイバーの構造

 光ファイバは、非線形性が起きにくいガラス材料で出来ていますが、非常に小さな領域に高い密度で光を閉じ込めるため、伝搬する光電力が大きくなると非線形性の影響が出やすくなります。光ファイバの非線形性は、次式で定義される非線形係数※3γによって表されます。

\[\gamma=\frac{\frac{2\pi{n_2}}{\lambda}}{A_{eff}}\]

ここで、λは波長、n2は使用するガラス材料によって決まる非線形屈折率※4です。モードエリアAeffは、光ファイバの構造によって決まり、コア径を大きくし、コア・クラッド間の屈折率差を小さくすれば大きくできます(図1.参照)。コア・クラッド間の屈折率差が同じ場合、コア径を3倍大きくすると、γは1/9になりますが、コア径を大きくしていく(規格化周波数Vが2.4を超えてしまう)とマルチモードとなりビーム品質が悪くなります。また、コア・クラッド間の屈折率差を小さくしてもAeffは大きくできますが、小さくしていくと曲げ損失が増加してしまい実用上問題となります。これらの条件を踏まえた上で光ファイバのパラメータを考えると、一般的には、コア径は6~40μm、コア・クラッド間の屈折率差は0.06程度が使われます。

 

図1. ステップインデックス型シングルモード光ファイバでのモードエリア(Aeff)、モードフィールド径(MFD)、コア径の関係

 

[用語解説]

※3 非線形係数:入射光電力に対してどのくらいの非線形の影響が出るかを表す係数で、非線形の影響Φ(W)は、入射光電力P(W)、ファイバ長L(km)、実効ファイバ長Leff(km)、減衰定数α(dB/km)、非線形係数をγ(W-1km-1)として、次式で表されます。

\[\Phi=2\gamma{L_{eff}}P\]

\[\gamma=\frac{\frac{2\pi{n_2}}{\lambda}}{A_{eff}}\]

\[{L_{eff}}=\frac{1-exp(-\alpha{L})}{\alpha}\]

 

※4 非線形屈折率:非線形屈折率n2(m2/W)は、強い光入力によって物質の屈折率が変化するときの係数で、入射光強度を I(W/m2)、入射光強度に依存しない通常の屈折率をn0としたとき、物質の屈折率は次のように表されます。

\[n={n_0}+{n_2}I\]

 

■ラージモードエリア(LMA)ファイバーの用途

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 LMAファイバーは、主にファイバレーザの発光媒体や伝送路として利用されます。ファイバレーザは、ビーム品質、エネルギー効率、スペース効率、安定性などに優れ、印字などのマーキングや、溶接、薄膜やセラミック基板の切断などに使われます。

 発光媒体用LMAファイバーでは、コアにイッテルビウム(Yb)などの希土類元素を添加した上で、クラッドを2重としたダブルクラッド(Double Cladding)構造が用いられます(図2.参照)。

 

図2. ダブルクラッドファイバの構造と励起光の伝わり方

 

 基本的なファイバレーザの仕組みを図3に示します。励起光は、第1クラッドに入射され、第2クラッドで全反射しながら伝搬します。励起光がコアを通過する際に、添加されたYb元素のエネルギー準位を上昇させ光を放出させます(図4.参照)。

 

図3. ファイバレーザの基本的な構成

図4. 希土類元素の励起と光の放出

生み出された放出光は、LMAファイバーの両端に接続されたファイバブラッググレーティング(FBG : Fiber Brugg Grating)※5間で特定の波長だけが反射されて共振状態となりレーザ発振します。レーザ光は、反射率が低く設計されたFBG側から出射されます。照射部までは、伝送用ファイバを使って導きます。コア部に希土類元素を含まないLMAファイバーは、高出力レーザ光や励起光伝送用の伝送路としても使われます。

 

[用語解説]

※5 ファイバブラッググレーティング:光ファイバに紫外線を照射すると屈折率が変化することを利用して、光ファイバの長手方向に波長オーダーの周期的な屈折率変化を持たせたもので、ファイバ内を伝搬する特定の波長の光だけを反射させることができます。

 

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